東京藝術大学の新試験「記憶聴音」について

東京藝術大学音楽学部の入試では、基礎能力試験のひとつとして「聴音」の試験があります。

例年は「単旋律」「二声」「四声体」でしたが、その中の「単旋律」が今年度から"記憶聴音”へと変更されました。

通常、聴音はメロディを聴きながら楽譜を書いていきますが、これは文字通り覚えて書く聴音。
規定回数、演奏を聴き終わるまでペンを持ってはいけません。

聴音の訓練を全くしていない人にとっては神技のように感じられるかもしれません。が、これを受験生はこなさなければいけないわけです。おお大変。

音楽は「単音」では成立しない

特に楽譜や音楽のシステムに不慣れな人は、楽譜上で音をひとつひとつ読んでしまいがちです。

でも「音楽」というのは「単音」が集まって「音楽」になるわけではありません。
「音楽」が「音楽」としてそこに存在していて、それを分解したときに「単音」が表れるだけ。

私たちが普段音楽を聴くときに、単音を意識することはまずありませんよね。
音楽を流れで記憶する。だからこそ、私たちは耳で親しんだ曲を覚えて歌うことができるわけです。

聴音というのは「楽譜にする」という性質上、どうしても単音に意識が向きがちです。
この入試の変更は、ひとつひとつの音を無機質に追うのではなく、「きちんと音楽を音楽として捉えていますか?」という受験生への問いなのだと思います。

とはいえ、いきなり入試レベルのものを覚えて書きましょう!と言われても、無理なものは無理!と叫びたくなってしまいます。

記憶聴音はどれだけ「まとまり」を作れるか

例えば「かえるのうた」を例としたときに、

この曲の冒頭のメロディは「ドレミファミレド」と動いていますよね。

これをひとつひとつ「ド」「レ」「ミ」「ファ」…と覚えていたらとてもとても覚えきれませんが、
「ドからファまで上がってまたドまで降りる、リズムは全部同じ長さ…」という特徴を覚えることで簡略化できます。
(こうして文字で書くと複雑に見えなくもないですが…)

どこが順番に上がっているか、どこが順番に下がっているか。
音が跳躍しているところも、ここは何の和音の分散なのか。
リズムパターンが同じところはどこか、違っているところはどこが違うのか。

メロディを聴きながら、パターンを分析していくことで、ある程度の長さのものも記憶することが可能になっていきます。

まずは普段練習している聴音よりも少し簡単なレベルの課題を用意して、
1小節だけ聞いて覚えて書けるかどうか、2小節だけ覚えて書けるかどうか、4小節だけ…と少しずつ増やしながら練習していくと良いでしょう。

仕上げにこちらをどうぞ

【2025年度入試】東京藝大 記憶聴音《完全対策!予想問題50問総まとめ》

こういう感じの問題が出るだろう、と私が予想して作成した問題が50問収録されています。3時間18分!
これを全部こなせば記憶聴音はバッチリのはず。

受験生の方はもちろん、純粋に耳を鍛えたいというレスナーの方にもお勧めします。
もちろん、通常の聴音課題としても使えますので、レベルに合わせてお使いください🖐️